どうも、ひろきちです。
2026年7月31日、キオクシアホールディングス(285A)が2027年3月期第1四半期の決算を発表しました。純利益が前年同期比46.1倍という強烈な数字が出た一方で、株価はここ1カ月半で乱高下しています。ニュースやSNSでも話題になっていたので、今回は決算の中身と、個人投資家目線で気になるポイントを整理してみたいと思います。
どんな会社?
キオクシアホールディングスは、NAND型フラッシュメモリー(スマホやパソコン、データセンターのSSDなどに使われる記憶用の半導体)を作っている会社です。もともと東芝のメモリー事業が分社化してできた会社で、2023年12月に東京証券取引所プライム市場に上場しました。
大株主を見ると、東芝が30.5%、米投資ファンドのベインキャピタル系(BCPE Pangea Cayman関連)が合計で50%以上を保有しており、東芝とベインキャピタルの共同経営という色合いが強い会社です。従業員数は連結で15,042名(2025年3月末時点)。売上のほぼすべてをNANDメモリー関連が占めており、生成AIの普及でデータセンター向けの需要が急拡大していることが、この会社の業績を大きく左右しています。
株価と投資指標
まず株価の動きを振り返ります。キオクシアの株価は2026年に入ってから右肩上がりが続き、2026年6月22日には取引時間中に112,700円という上場来高値をつけました(終値は108,700円)。
ところが、そこから状況が一変します。2026年7月17日、韓国のSKハイニックスがNAND工場に80兆ウォン(約8.7兆円)規模の設備投資を行うと発表したことをきっかけに、「メモリー市場の需給が緩むのでは」という警戒感が広がり、キオクシアの株価は前日比-16.10%の52,110円まで急落しました。その後も値動きは荒く、7月30日には39,500円前後まで下落。6月22日の高値からわずか1カ月ほどで、株価は6割以上も下がったことになります。

こうして見ると、6月の急騰から7月の急落まで、わずか1カ月ちょっとで株価が半値以下になっていることが分かります。そして決算発表日である2026年7月31日には、前日比+17.72%高の46,500円まで急反発しました(終値時点)。決算の内容に加え、後述する自社株買いや株式分割の発表が重なったことが、買い戻しの材料になったとみられます。
株価指標では、2026年5月22日時点でPER(株価が1株利益の何倍まで買われているかを示す割安さの目安)は56.49倍、PBR(株価が1株あたり純資産の何倍かを示す指標)は22.39倍でした。株価が急騰した6月22日時点ではPERが106.97倍、PBRが42.4倍まで跳ね上がっており、業績の伸び以上に株価が先回りして買われていたことが分かります。なお配当利回りは0%で、現時点では無配です。値上がり益(キャピタルゲイン)狙いの銘柄であり、配当を目的にした投資には向いていません。
業績チェック
次に業績を確認します。キオクシアの過去5年間の売上収益と営業利益の推移は次の通りです(決算短信・有価証券報告書ベース)。

2022年3月期は売上収益15,265億円・営業利益2,162億円の黒字でしたが、2023年3月期・2024年3月期はメモリー価格の急落で2期連続の営業赤字(それぞれ-990億円、-2,527億円)に沈みました。そこから2025年3月期に黒字転換(売上収益17,065億円、営業利益4,517億円)し、2026年3月期は売上収益23,376億円(前期比+36.99%)、営業利益8,704億円(同+92.67%)、親会社の所有者に帰属する当期利益5,544億9,000万円(同+103.62%)と、過去最高益を更新しました。この図を見ると、赤字の谷から一気に駆け上がるV字回復がよく分かります。
そして2026年7月31日に発表された2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)は、売上収益1兆7,671億円(前年同期比+415.5%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益8,421億6,500万円(前年同期比46.1倍)という決算になりました。生成AI向けデータセンターの需要拡大でNANDメモリーの販売価格が大きく上昇したことが主な要因です。会社は続く2027年3月期第2四半期(7〜9月)についても、純利益が前年同期比31倍の1兆2,700億円になる見通しを示しています。一方で、通期(2027年3月期全体)の業績予想は今回非開示となっており、この点は少し気になるところです。
今後の経営方針
決算発表と同じ2026年7月31日、キオクシアは株主還元に関する2つの大きな発表を行いました。
1つ目は自社株買いです。上限8,000億円、株式数にして最大3,000万株(発行済み株式数の5.5%)を、2026年8月3日から10月30日までの期間で取得するとしています。
2つ目は株式分割です。1株を3株に分割し、2026年9月30日を基準日、10月1日を効力発生日とすることが決まりました。株式分割によって1単元あたりの投資金額が下がるため、これまで手が出しにくかった個人投資家にも買いやすくなる効果が期待されます。
会社側はこれらの施策を「資本効率の向上」「株主還元の強化」「投資家層の拡大」のためと説明しています。過去最高益で得た利益を、設備投資(研究開発費は804億9,700万円、設備投資額は2,256億円)と株主還元の両方に振り向けていく姿勢が読み取れます。
株価の展望:強気材料と弱気材料
ここからは、今回の決算を受けてひろきちが感じたことをまとめます。
まず強気材料です。
(1) 生成AIやデータセンター向けの需要拡大を背景に、NANDメモリーの価格が上昇基調にあり、それが直接業績に反映されている点。2027年3月期第2四半期も純利益31倍という強い見通しが示されており、少なくとも当面は増益トレンドが続く可能性があります。
(2) 8,000億円規模の自社株買いと1対3の株式分割という、株主還元と投資家層拡大を同時に進める姿勢を見せたこと。過去最高益のタイミングでこうした施策を打ち出したのは、経営陣の業績への自信の表れとも受け取れます。
(3) 2023〜2024年度の大幅赤字から一気にV字回復したという実績があること。メモリー業界の構造(大手数社への集約)が以前より価格を守りやすい体制になってきているとの見方もあります。
一方で、弱気材料も無視できません。
(1) 株価がすでにかなり買われている点です。6月22日時点のPERは106.97倍、PBRは42.4倍と、通常の製造業としては極めて高い水準でした。好業績が今後も続くという前提が崩れれば、株価が大きく調整するリスクがあります。
(2) メモリー半導体は、需要と供給のバランスで価格が大きく上下する「シリコンサイクル」と呼ばれる景気循環が非常に激しい業界です。実際に、SKハイニックスの大型設備投資発表という1つのニュースだけで株価が1カ月足らずで6割以上下落しました。今回のAI特需についても「今回は本当に違うのか」を冷静に見極める必要があります。
(3) 通期の業績予想が非開示であること、そして配当利回りが0%であることです。会社が強気の見通しを出しにくい何らかの不透明要因(価格動向や大口顧客との契約など)がある可能性も考えられますし、インカムゲイン(配当収入)を求める投資家にはそもそも向いていない銘柄だという点は押さえておきたいところです。
個人的には、キオクシアは「生成AIの恩恵をダイレクトに受けている数少ない日本株」という魅力は間違いなくあると思います。ただ、直近1カ月半だけでも上場来高値から6割以上下落する場面があったように、値動きの荒さは相当なものです。決算の数字に飛びつく前に、「自分はこのボラティリティ(値動きの荒さ)に耐えられるか」を一度冷静に考えてから向き合うべき銘柄だと感じています。
まとめ
キオクシアの2027年3月期第1四半期決算は、純利益46.1倍という驚くべき数字が出た一方で、株価はその発表前後も含めて激しく揺れ動きました。生成AI特需という強い追い風がある反面、メモリー半導体特有の景気循環リスクと、すでに高くなったバリュエーションには注意が必要です。強気材料・弱気材料の両方を踏まえたうえで、無理のない範囲で向き合っていきたい銘柄だと思います。引き続き、無理せずコツコツと。次回もお楽しみに!
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English version is here → [Stock Analysis] Kioxia (TSE: 285A): Net Profit Up 46x, So Why Is the Stock Swinging Wildly?
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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