どうも、ひろきちです。
今回は9月8日(火)の米国株市場の振り返りです。
中東情勢の緊迫化を受けて原油価格が急伸したことに加え、カナダの対米報復関税が発効したことも重なり、NYダウは628ドル安(-1.18%)と大きく下げました。一方でナスダック総合の下げは0.3%程度にとどまり、資金が景気敏感株からハイテク株へ逃避するような値動きに。インテルがアナリスト格上げを受けて9%超上昇するなど、個別株の値動きは明暗がくっきり分かれた1日でした。
3指数の動き:ダウが独歩安、ナスダックは底堅く
| 指数 | 終値 | 前日比 | 騰落率 |
|---|---|---|---|
| NYダウ | 52,786.07 | -628.18 | -1.18% |
| S&P500 | 7,675.28 | -43.27 | -0.56% |
| ナスダック総合 | 26,421.41 | -85.01 | -0.32% |
この表からは、NYダウの下げ幅が突出して大きく、ナスダック総合はその3分の1程度の下落率にとどまっていることが読み取れます。景気敏感株の多いダウ工業株30種平均が売られる一方、ハイテク株中心のナスダックには資金が相対的に残ったことを示す値動きです(出典:Yahoo Finance、24/7 Wall St.)。
背景には、週末から続く中東情勢の緊迫化があります。米国とイランが週末にペルシャ湾・オマーン湾で武力行使を応酬したのに続き、この日はイランが支援するとされるフーシ派がサウジアラビアの石油関連施設を攻撃し、70人以上が負傷したと報じられました。イラン最高安全保障委員会の幹部からは、ホルムズ海峡の外側に船舶の航行を制限する「排他水域」を設定する方針も示されており、原油の供給不安が一段と強まりました(出典:AP通信、CBSニュース)。
さらにこの日は、カナダがトランプ政権の関税措置に対する報復関税(対象は最大200億ドル規模、税率15〜50%)を発効させたタイミングとも重なりました。トランプ大統領はカナダの航空機メーカー、ボンバルディアについて「米国内で生産しない限り米国での販売を認めない」とSNSに投稿するなど、対カナダの貿易摩擦も市場の重荷となりました(出典:ロイター)。加えて、9月4日発表の8月雇用統計が市場予想を大きく上回ったことを受けた9月利上げ観測もくすぶり続けており、米10年債利回りは4.79%前後と、年初来の高水準圏で高止まりしています(出典:Trading Economics)。
相場を動かした材料:中東発の原油高とカナダとの関税摩擦
この日最大の材料は、やはり中東情勢です。WTI原油先物は1バレル93ドル台まで上昇し、6週間ぶりの高値圏。北海Brent原油も98ドル台に乗せました(出典:Oilprice.com)。ひろきち個人の感想としては、原油高がそのままインフレ懸念に直結し、「利上げ観測」と「地政学リスク」という2つの重荷が同時に市場にのしかかっている状態だと感じます。金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)は9月15〜16日に開催予定で、この日程までに発表されるPPI(生産者物価指数)・CPI(消費者物価指数)の内容次第では、さらに神経質な値動きになりそうです。
もう1つの材料が、カナダとの関税摩擦の激化です。自由貿易を前提に築かれてきた米加の経済関係に楔が打ち込まれる形となっており、自動車・航空機など両国をまたいで生産網を持つ業種には逆風です。
話題になった銘柄:インテル、ニュースケール、ゴープロ、オラクル、ノバルティス
| 銘柄 | 終値 | 騰落率 | 主な材料 |
|---|---|---|---|
| インテル(INTC) | 104.48ドル | +9.1% | アナリスト格上げ・CPU値上げ観測 |
| ニュースケール・パワー(SMR) | 11.33ドル | +16.8% | SMR関連セクターへの資金シフト(個別材料なし) |
| ゴープロ(GPRO) | 1.45ドル | -15.0% | 業績不振・合併思惑の反動 |
| オラクル(ORCL) | 163.73ドル | +4.8% | 9月10日決算を前にした思惑買い |
| ノバルティス(NVS) | – | -12.6% | 心血管治療薬の治験失敗 |
※オラクルの株価は寄り付き前時点のものです。ノバルティスの終値は確認できなかったため空欄にしています。以下、それぞれ掘り下げます。
インテル(INTC):アナリスト格上げとCPU値上げ観測で9.1%高
半導体大手インテルの株価はこの日9.1%上昇し、104.48ドルで終えました。米証券会社ノースランド・セキュリティーズのアナリスト、ガス・リチャード氏が投資判断を「市場並み」から「アウトパフォーム」に格上げし、目標株価を120ドルに設定したことがきっかけです(出典:Seeking Alpha、Benzinga)。同氏は、サーバー向けCPU(中央演算処理装置)の供給不足が続く中でのインテルの業績改善余地や、テスラとの半導体生産協業「テラファブ」プロジェクトによる恩恵の可能性を指摘しました。これに加えて、インテルが年内3回目となるCPUの値上げ(約10%)を検討しているとの観測も伝わり、格上げと値上げ観測という2つの好材料が重なったことで、9%超という大きな上昇につながったと考えられます。長らく苦戦が続いていた銘柄だけに、好材料への反応が大きく出た形です。
ニュースケール・パワー(SMR):目立った材料なしで16.8%急伸
小型モジュール炉(SMR、小型の原子炉)を手がけるニュースケール・パワーは、この日16.8%高の11.33ドルまで買われ、値上がり率の上位に入りました。なぜ注目されたかというと、AI(人工知能)データセンター向けの電力需要拡大というテーマ性の強さを背景に、同業のオクロも同時に6〜7%上昇するなど、SMR関連銘柄がそろって物色されたためです。ただし今回の急伸について、明確な個別材料は見当たりませんでした(出典:24/7 Wall St.)。市場全体が軟調な中でのセクター内の資金シフト・物色人気という見方が出ていますが、断定はできません。なお、これだけ上昇してもニュースケールの株価は年初来では2割超のマイナス圏にあり、値動きの荒い銘柄であることも付け加えておきます。
ゴープロ(GPRO):業績不振と合併思惑の反動で15.0%安
アクションカメラのゴープロは15.0%安の1.45ドルとなり、値下がり率の上位となりました。背景には、直近四半期の売上高が前年同期比で3割超減少し、カメラの販売台数も前年比4割近く落ち込むなど、本業の需要そのものが弱っていることがあります。加えて、同社は今月、現金1株あたり1.14ドルで買収される合併契約を発表したばかりです。なぜこのタイミングで急落したのかというと、合併発表後に個人投資家の思惑買い(踏み上げ的な動き)で株価が買収価格を大きく上回る水準まで買われていた反動で、妥当な水準に向けた調整が入ったとみられます(出典:24/7 Wall St.、TIKR.com)。
オラクル(ORCL):9月10日決算を前に4.8%高
データベース大手オラクルは、9月10日に発表を控える決算を前に4.8%上昇しました。なぜ注目されたかというと、オラクルはAI向けクラウド需要の取り込みを進めており、今回の決算では売上高190億ドル規模が見込まれるなど、市場の関心が高いためです。ミズホ証券はアウトパフォーム判断を継続しており、アナリスト平均目標株価は242.69ドルと、直近の株価から5割超の上値余地を示す水準にあります(出典:Vantage Markets)。決算発表後の株価は上下11%程度動くとの予想も出ており、事前のポジション調整の動きが今回の株価上昇につながったとみられます。
ノバルティス(NVS):心臓病治療薬の治験失敗で12.6%安、関連銘柄にも波及
スイスの製薬大手ノバルティスは12.6%安となり、提携先のアイオニス・ファーマシューティカルズ(IONS、-10.5%)、別の神経筋疾患領域で治験に失敗したサレプタ・セラピューティクス(SRPT、-10.6%)にも売りが波及しました。きっかけは9月4日に発表された、心血管疾患のリスクを高めるとされる「Lp(a)」という物質を減らす薬「ペラカルセン」の第3相治験結果です。Lp(a)の数値そのものは薬によって下がったものの、心臓発作や脳卒中などの発生率はプラセボ(偽薬)群と比べて有意な改善が見られませんでした(出典:Novartis公式発表、STAT News)。なぜこの日まで反応が尾を引いたのかというと、Lp(a)を減らすアプローチ自体への懐疑が広がり、同じ標的を狙うイーライリリーやアムジェンの開発計画にも疑問符がついたためです。「数値は改善したのに、本当に効果があるとは言えなかった」という結果は、バイオ医薬品セクター全体の投資家心理を冷やしました。
セクター別・ETFの動き:資金はエネルギー・ハイテクへ、ヘルスケアは総崩れ
この日値上がりしたセクターは、原油高の恩恵を受けたエネルギーと、インテルや光通信関連銘柄(AAOI、ライトウェーブなど)が買われたテクノロジーの2つでした。著名投資家として知られるジム・クレイマー氏がOpenAIの新型AI「GPT-6 Astra」の発表を「その日一番の材料」と位置づけるなど、AI関連への物色意欲が根強く残っていたことも背景にあります(出典:X/CNBC)。一方、値下がりが目立ったのはノバルティスの治験失敗が響いたヘルスケアと、金融でした。NYダウを構成する景気敏感株・資本財株が多いことも、指数全体の重荷になったとみられます。
日本の個人投資家に馴染みの深いETFにも触れておくと、S&P500連動のVOOやVTIはおおむね指数と同様に0.5%前後の下落、ナスダック100連動のQQQはより小幅な下落にとどまったとみられます。高配当ETFのSPYD・HDV・VYMは、エネルギー株の比率が比較的高いこともあり相対的に底堅く推移した可能性がありますが、詳細な値動きまでは確認できていないため断定は避けます。
為替・商品市場では、ドル円は154円台前半まで円高が進行し、前営業日の154円36銭から一段の円高となりました(出典:Wise、Investing.com)。原油(WTI)は1バレル93.20ドル(+1.88%)、金(ゴールド)は1トロイオンス4,445.60ドル(-0.69%)で取引されました。VIX(恐怖指数、市場の警戒度合いを示す指標)は15.30と、引き続き落ち着いた水準ながら、前日からはやや切り返しました(出典:CBOE、Yahoo Finance)。
今日の日本株・注目点:中東情勢とPPI・CPIに注目
米国市場の下落を受けて、東京市場も上値の重い展開が予想されます。今週の注目点を3つ整理します。
①中東情勢の緊迫化がどこまで続くか。ホルムズ海峡での軍事的緊張が長期化すれば、原油高を通じて世界的なインフレ圧力・株安要因となり得ます。②9月10日に8月分のPPI(生産者物価指数)、9月11日に8月分のCPI(消費者物価指数)が発表されます。9月4日の雇用統計に続いてインフレ指標が市場予想を上回れば、9月15〜16日のFOMCでの利上げ観測がさらに強まる可能性があります。③為替は154円台前半までの円高が一服するか、それとも一段と進むかが焦点です。円高が進めば、輸出関連の日本株には逆風となりやすい点は覚えておきたいところです。
9月4日の米国株まとめ記事では、雇用統計をきっかけに9月利上げ観測が強まった経緯を詳しく解説しています。あわせて総資産公開の全記録はこちらからも振り返ることができます。
今日も無理せずコツコツいきましょう。いってらっしゃい!
English version is here → U.S. Market Recap (English)
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
いつも読んでいただきありがとうございます。下のバナーをポチッと応援クリックしていただけると、ひろきちの励みになります!



コメント